後立山北部 丸倉山(1782m) 2016年4月16日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 5:02 林道山之坊線入口−−5:11 大所川第二発電所入口−−6:00 大所川橋−−6:33 吊橋分岐−−7:05 ツリコシ沢−−7:36 大所川第一発電所入口−−8:15 標高1110m(休憩) 8:33−−9:31 標高1310m平坦地−−10:43 丸倉山西鞍部−−10:53 丸倉山(休憩) 12:18−−12:28 1740m峰−−12:31 1720m峰(アイゼン装着) 12:37−−13:18 林道−−13:26 ツリコシ沢−−13:44 吊橋分岐−−14:12 大所川橋−−15:09 大所川第二発電所入口−−15:16 林道山之坊線入口

場所新潟県糸魚川市
年月日2016年4月16日 日帰り
天候
山行種類残雪期籔山
交通手段マイカー
駐車場林道入口付近及び一つ下のカーブに駐車可能
登山道の有無無し
籔の有無残雪のためほぼ藪漕ぎ無しだが1740m峰〜1720m鞍部はネズコの藪が半分出ていた
危険個所の有無1720m峰からの下りは急斜面で滑落注意
山頂の展望西側以外は開ける
GPSトラックログ
(GPX形式)
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コメント林道山之坊線から往復。今年は雪が少なくDJF氏が登った2015年春と比較すれば林道の雪解けは1ヵ月程度早いと思われツリコシ沢までほとんど雪を踏まなかった。往路では標高1000m程度から雪が続くようになり、丸倉山西鞍部への登りは復路で使った斜面より傾斜は緩くノーアイゼンで登れた。黒負山〜丸倉山の尾根に乗ると大雪稜。丸倉山はDJF氏が登った時と比較して残雪が多く彼が残したテープは発見できなかった。1740m峰への藪も半分埋もれていた。1720m峰からの下りは明瞭な地形が少なく読図に少々苦労。部分的にはかなりの傾斜あり


林道区間
丸倉山付近


林道山之坊線入口近くに別の車があった 林道山之坊線入口。車止めは外されていた
除雪用重機が待機中 林道起点から各発電所までの距離。10kmにウンザリする
第二発電所分岐は起点から500m まだ第一発電所まで9.5kmもある
周囲の南斜面には雪が無い 北斜面の林道の雪も少ない
この先も林道の積雪は少ないようだ 大所川の谷間から見た鉢ヶ岳
林道上に根元から落ちていたブナと落石 DJF氏が歩いた時に崩壊していた場所
大所川橋。相変わらず左岸側は水没している 黒負山へ登るときに利用した林道。雪が無い
また落石 沢からの土砂の押し出し。今回デブリは皆無だった
まだまだ雪が見えなく不安になる スノーシェッドではなくロックシェッドか

大前山の西側にかかる吊橋 今回目撃したカモシカは1頭だけ
木にペイントされた林道起点からの距離(6.8km) こちらは岩にペイント(7.6km)
ツリコシ沢。まだ周囲に雪なし 標高890m。帰りはここに下ってきた
標高920m付近から林道が雪に覆われる 大所川第一発電所分岐
林道カーブの連続はショートカット 蛇籠をよじ登って上部の林道へ
またショートカット。藪は薄い 標高1000m付近で雪が現れる
標高1110mの林道カーブで休憩(出発から3時間15分) なだらかな尾根を進む
標高1280m。熊棚が多い 熊の木登りの爪痕
南には蓮華温泉 北には丸倉山
丸倉山西鞍部目指して登る 無雪期は蔓籔地獄か
標高1310m平坦地 谷の左岸側を登る
デブリを横断 雪を求めてトラバース
標高1500m地点から見た南〜西の展望(クリックで拡大)
1730m鞍部を目指す 浅い谷を登る
鞍部が近づくと雪が減る 鞍部直下は笹が出ていた
1730m鞍部。待望の残雪期らしい展望!
尾根東側の雪庇溶け残りを伝う 雪庇の最後は断絶しているので西へ迂回
尾根西側は雪が少なく藪が顔を出す 広い丸倉山山頂部
丸倉山山頂 倉山山頂の西側はネズコが茂る
丸倉山山頂から見た北側(クリックで拡大)
丸倉山山頂から見た南側(クリックで拡大)
東側の1740m峰を目指す まだ雪がつながっている
鞍部から丸倉山を振り返る。 残雪を使ってネズコ藪を迂回
丸倉山を振り返る 1740m峰山頂
1720m峰を目指す 1720m峰山頂
下りの急斜面に備えて今シーズン初アイゼン 最初は尾根に乗って東北東へ
標高1590mで一時的に傾斜が緩む。ここで右に進路変更 標高1440m。小さな肩で現在位置確定
標高1330m。ブナの急斜面を下る 標高1220mで傾斜が緩む
標高1150mから振り返る 標高1100m
標高1080m。リボンが2個所で見られた 標高1070m。雪が減ってきた
標高1060m。かろうじて雪がつながる 標高1000m
標高950m。この辺から笹を歩くことが増える 林道が見えた
林道に降り立つ ペイントの距離表示がいい目安
林道脇にはたくさんのフキノトウ カタクリ
ウド川合流点より上流側の大所川屈曲個所 大所川橋の距離表示は4.4kmだった
スミレの群落 大所川第一発電所
林道から西を振り返る 海谷山塊も西側はもう雪がほとんどない
1km表示は電柱 雨飾山
林道入口のチェーンゲート 林道入口


 最近は長野県内の山を優先して登ってきたが、今年の雪解けの早さでは私にとっての未踏峰で雪が利用できる場所はもうほとんどない。せっかくの残雪期は雪があって得をする山にしたいため、今回は県外に出ることにする。行き先は糸魚川北部の丸倉山。以前登った黒負山や五輪山の南側の1800m弱の山である。今思えばこれら2山と絡めて登れば効率的だったのだが、当時の林道積雪状況のリスクを考えると仕方ない面もあった。

 ネットで調べると丸倉山の具体的な記録は例によってDJF氏の記録(クリックで記録へジャンプ)のみ。先週の西ノ岩菅と同じパターンでほとんど登られることがない山だろう。氏は昨年5月中旬に登っているが今回は1ヶ月早いものの雪解けも1ヶ月近く早く、結構似た残雪状況になると予想された。林道の雪は溶けていて欲しいが山の雪はできるだけ多く残っていてもらいたい。先週同様、DJF氏の記録をプリントアウトして持っていくことに。ただし先週と違って今週は林道歩き以外のリスクはさほど高くないはずなので、プリントアウトしたものの事前に読むことはなかった(山頂で読んだ)。

 ルートであるが、蓮華温泉への県道が開通していない今の時期では大所川沿いの長い林道歩きは当然ながら必要。DJF氏は丸倉山の尾根とは呼べない東斜面を往復しているが、ここは地形図を見て分かるように尋常な傾斜ではない。最近は私もそんな場所も登り下りしているので大丈夫とは思うが、計画段階から取り入れるのはちょっと・・・・ということで、林道歩きが少し伸びるが傾斜が一番緩い丸倉山西側鞍部経由で登ることにした。あとは雪がどの程度残っているかどうかだ。

 登山口は林道山之坊線。長野市から僅か1時間半で到着。東京から来た時には4時間近くかかったと思う。2005年4月30日に黒負山に登った時より半月早いが周囲の残雪は前回より格段に少なく、藪漕ぎにならないか心配になるくらいだった。これなら先週でも良かったかなぁと後悔。ただし林道の残雪状況は不明だ。今回の核心は長い林道歩きにある。林道崩壊や残雪によるきわどいトラバースが無いことを祈ろう。ピッケルに12本爪アイゼンを持って出発。ワカンを持つか悩んだが、もし林道上の長い区間で雪が残っている場合は帰りに緩んだ雪で相当消耗するのは確実なので持つことにした。

 林道入口には松本ナンバーの車が止まっていた。私が出発準備している間に室内灯が点灯しリアゲートが開いていたので黒負山でも狙うのかと思ったが、林道上には足跡は無くいったいどこに消えたのか謎だ。林道入口の鎖は外されているがカーブを曲がった先で残雪で車は入れない状況だった。手前には除雪用重機が置いてあったのでそのうちに除雪されるだろうが、今回は最初から除雪無しである。

 林道入口には「大所川第二発電所1km 大所川第一発電所 10km」の案内があり、計算はしていたが10kmは長い。最初のカーブを曲がると雪が現れるが道路の半分ほどを覆う程度で雪の上を歩く必要は無い。その先は斜面にもほとんど雪は残っておらず、残雪による林道歩きの危険度はかなり低いと思われるが、丸倉山本体に取り付いてからどれくらいすれば残雪にありつけるのか心配になる。

 第二発電所分岐を通過、ここにも僅かに雪が残る程度で黒負山に登ったときよりも格段に雪は少ない。大所川対岸の南斜面にもほとん雪が見えず、連休には赤禿山から聖山なども考えていたがほとんど藪が出てしまっていそうだ。

 前回の黒負山のときは発電所に水を落とす導水管までが除雪済みだったが、今回はここまでもこの先も除雪はされていないが林道全面を覆うような雪は無い。除雪作業が始まったらあっという間に終わってしまいそうだ。道路上にあるのは雪でなく、落石や滑り落ちてきた木や沢の土砂の押し出しばかりだった。持ってきたワカンの出番が無い。幸い、林道が崩壊した個所はなく危険個所はなかった。

 大所川を右岸から左岸に渡る大所川橋は前回同様に左岸側の路面は水没しているので路面より一段高くなった欄干のコンクリート基礎を歩いた。雪解け水が盛大に流れ出していているが、橋を渡った先の路面には藻が張り付いているくらいなので、ほぼ常時水が流れているようだ。滑りやすいの要注意だ。

 カーブを曲がって坂を上がった先が黒負山への取り付きに利用した林道だが、今回は周辺には全く雪が無い。まあ、しばらくは植林帯が続いてその中に林道が伸びているので藪漕ぎの必要はないが、林道が終わってから雪が残っているのか不安になる光景だ。大型連休になったら相当雪が減っているだろう。

 林道が左岸に移ってからは南斜面の通過に変わるので林道上はいっそう雪が無くなった。歩きやすいので助かるのだが複雑な心境だ。小さなロックシェッドを潜りなおも進むと右岸へ渡る立派な吊橋が登場。この尾根を登ると大前山に至るはずだが作業道があるのだろうか。途中、白いカモシカが逃げていくのが見え、急斜面の途中で立ち止まってこちらを見ていた。前回の黒負山では結構な数のカモシカを見たが今回はこの1頭だけだった。

 長い林道歩きはまだ続くがツリコシ沢が登場すれば終わりが見えてくる。ツリコシ沢には発電用取水口があるが今は使われていないようで、土砂に覆われていて水門は全開で沢水の全量がツリコシ沢を流れ下っていた。

 標高920m付近のカーブからやっと林道上に雪が登場し一安心。硬く締まって歩きやすい。第一発電所分岐より先も林道を進む。ここで斜面に充分な雪が残っていれば林道を無視して斜面直登だが、残念ながら路面に雪はあっても斜面には雪が無い。それでもヘアピンカーブの連続する場所は林道を素直に歩くのは非効率的なのでショートカット。最初のカーブは雪は無いが藪は薄く、潅木斜面を少し登ると大き目の蛇籠が登場、金網の目に足をかけてよじ登って上部の林道に出た。そこでも雪は無いが小沢沿いは笹が薄そうなのでショートカット。元々この標高ではまだ笹はそれほど濃くないので無雪期でも問題なさそうだ。次の林道カーブからは徐々に雪が繋がるようになり、雪を伝って歩けるようになった。

 雪に覆われた最後の林道ヘアピンカーブ(標高1110m)で休憩。ここまで3時間15分かかっている。軽く飯を食って水分補給。今日は好天で日焼けしそうなので顔、首、耳に日焼け止めを塗った。もう帽子は防寒用の毛糸ではなく日差しを避けるための麦藁帽子の方が良さそうだ。

 この先はしばらくは幅が広く傾斜が緩やかな尾根歩き。一帯はブナ林で熊棚があちこちに見られたが、まだ熊の足跡はなくカモシカの足跡ばかりだった。落葉したブナを通して左手には蓮華温泉の建物、右手には丸倉山だ。丸倉山は全体的にブナに覆われ残雪をまとっており、この分なら藪漕ぎは回避できるだろう。

 標高1310m地点は広い平坦地で樹林が開けた見通しのいい雪原だった。これから登る谷も見えるが予想に反して意外と流れが強そうで、雪が割れて流れが出ているし小さな滝も見える。当初はこの谷の右岸側にある小尾根を登る予定だったが渡れるか不安になり左岸側を登ることにした。左岸側には尾根は無いが谷沿いはそこそこ傾斜は緩やかで雪も残っているので大丈夫だろう。この平坦地ではブナに絡みついた蔓を目撃、無雪期は地獄の蔓藪らしい。蔓はしなやかで無理に突進しても力で断ち切ることはほぼ不可能で、ナタが無いと非常に厄介だ。

 谷沿いもブナだが大きな木は無くなって背の低い木ばかりに変わる。雪はあるのだが細いブナで雪の重みで横になったものがあり、枝が盛大にルートを塞ぐ場面が多く場所を選びつつ進んでいく。このまま斜面を上に上がってもいいのだが、いいかげん疲れてきた足にはきつい急斜面だ。このまま谷沿いを行こう。

 標高1500mを越えて谷の幅が広がって傾斜が緩むと沢は雪に埋もれて見えなくなった。そろそろ鞍部が見える頃だが、ここから見上げるとどこか最低鞍部なのか判別がつかない地形だった。ほぼ真北のはずなので方位磁石で方向を確認して登っていく。そこは浅い谷地形でそれなりの傾斜はあるが、雪質が適度でアイゼン無しでも問題なく登れた。ここから見上げる五輪山への斜面はどこもほとんど立ち木が無い広大な斜面で、山スキーには最適だろう。ただしここまで来るのに労力が掛かりすぎる。

 標高1620mで一時的に傾斜が緩むが再び斜面が立ち上がってジグザグを切って雪面を登っていく。上部は雪が消えた部分も見えるので、できるだけ上まで行きがある場所を選んで進んでいく。残雪はまっすぐ上部にはつながっておらず、雪が続く左側へと大きくトラバース。この時点でも最低鞍部は目視では分からないような地形だ。まあ、それだけ黒負山〜丸倉山をつなぐ尾根の鞍部付近はなだらかだということだろう。

 尾根上に出る直下だけは雪が切れて根曲がり竹の藪だったが短距離だし我慢できる程度の濃さだった。

 藪を突破して尾根の直上から東側は広大な雪稜で、これぞ残雪期の風景だ。ここから黒負山までは藪は全て雪の下で、この雪質なら1時間もあれば到着できるのではなかろうか。五輪山へもほぼ立ち木が無い尾根が続いている。本当に素晴らしい光景だった。

 さあ、山頂まで最後の登りだ。尾根東側に張り付いた雪庇の溶け残りを辿って登っていくと先人の足跡らしきものを発見。最初は熊かと思ったが靴の形をしているようだ。おそらく先週末のものだろう。こんなところに登るのはどんな人物か興味がある。

 雪庇は残念ながら山頂までは続かず山頂直下で断ち切れていた。段差は高さ2mくらいあるので登るのは不可能で、適当な場所で尾根に取り付き西に逃げる。ということはそれまで歩いていた場所は無雪期なら空中のはずだ。尾根上は雪は格段に減るが背の高い深いシラビソ樹林で意外に笹が薄く歩きやすかった。考えてみればこれまでずっとブナ林だったが、山頂直下のこの部分だけはシラビソだった。

 広い山頂部に出るとシラビソは消えて広大な雪原と西側には矮小な檜の仲間。最初はアスナロかと思ったが葉の裏側を確認した結果、どうやらネズコらしい。ヒノキ、サワラ、ネズコ、アスナロは全てヒノキの仲間で葉が似通って判別が難しいが、裏側の模様?が異なるので裏を見れば分かるそうだ。ネズコは葉の裏に白い模様(気孔帯)が無いのが特徴で、他の3種は白い模様が存在する。

 西側は低いネズコに邪魔されてすっきりとは見えないが、その他の方向は遮るもののない大展望。天気がいいのはありがたいが空気がよどんで空気の透明度が悪く遠望が効かないのが残念だ。白馬岳が霞んでしまっている。東側は妙高火打がかろうじて見える程度だった。妙高の笹ヶ峰まで除雪完了したかどうか知らないが、車で入れるようになっていれば山スキーヤーで賑わっているだろう(既に除雪完了だそうだ)。

 休憩しながらDJF氏の記録を読む。どうやら林道や林道周辺の残雪状況は今と変わらないようだが、山の上の雪の量は今の方が格段に多いように思えた。氏が登ったのは昨年であり山頂の木にテープを残しているが、写真に写るその木が見えない。木の種類は幹の表面から推測するにネズコではなく矮小なシラビソかコメツガと思われるが、それが今は影も形もない。間違いなく雪の下、正しくは雪の重みで横に寝ているのだと思う。山頂付近の雪面に顔を出しているのはネズコばかりだ。また、お隣の1740m峰はDJF氏の時は藪漕ぎだったそうだが、今は充分な残雪があって尾根直上は無理としても東側を容易にトラバースできる。また、氏が黒負山斜面で発見した「ガッツポーズ男」「ペンギン」の雪形も見られない。彼の写真と比較すると黒負山斜面の雪は明らかに今の方が多い。雪の残り方は下の方と山の上では異なるようだ。

 今日は本当にいい天気で風も無く、ザックを下敷きにして横になったら眠ってしまった。下界では20℃越えの予報だったから標高約1800mの山の上でも寒くないのも当然だ。でも雪解けが早まって大型連休には低い場所の雪は期待できそうにない。今年は行き先に悩まされそうだ。

 帰りのルートであるが、長い林道歩きはうんざりなのでショートカットを考えた。ツリコシ沢が雪で埋まっていれば1720m峰から北東に落ちる尾根を使うのだが、林道付近では沢に残雪は皆無で今回はダメだ。その1本南の1175m標高点がある尾根が一番使いやすそうだが、そこに至るまでは尾根地形ではなくタダの斜面で読図が難しそうだ。DJF氏の記録を見直すとこの尾根を往復していることが分かった。ただし氏の場合は登りもこの尾根を使っているので下山時は自分の足跡が目印になったはずだが、今回はその手は使えず純粋な読図勝負となる。まあ、多少ルートミスしてもどこかで林道にぶち当たるだろうからお気楽だが。唯一の問題は急斜面。通常なら突っ込みたくない傾斜であるが、往路でいい材料を得ている。この急斜面は一面のブナ林であることが分かっている。過去の経験上、痩せ尾根、岩場などの危険個所には常緑樹があるのが常であり、ブナ林は安全地帯の目印なのだ。傾斜は急でも崖は無いはずで、最悪はバックで下ればいいだろ。

 長い休憩を終えて出発。まずは東隣の1740m峰だ。見下ろすと1740m峰へ登る尾根の南側は雪原で尾根上は樹林が茂っている。雪庇になりかけた急斜面を鞍部に向かって下っていく。ノーアイゼンだが部分的には予想外に締まった雪が登場し、踵の食い込みが不十分でヒヤっとする場面もあった。まあ、ここなら落ちても鞍部まで立ち木はないので安全に止まるだろうけど。

 鞍部からの登り返しは尾根上はネズコの藪なのでそれを避けて南側をトラバース。過去の経験でもヒノキ類の藪はかなり厄介で、上越国境や荒沢岳東尾根で痛い目に遭っている。石楠花より密生し、矮小な幼木でも幹は硬く腕で掻き分けるのは不可能で体を差し入れるしかないし、密度が高いと地面に足が着かないこともある。今回はネズコ藪の内部もまだ雪が残っていて本格的な藪漕ぎは不要だった。

 最後は雪を伝って南から東へと藪を避けて巻き込んでピークに到着。当然ながら人工物はない。北東の一段低い位置には1720mが見えているが、これも残雪で難なく立てそうだ。

 1720m峰への下りは緩やかで登り返しも緩やか。尾根西側はシラビソ樹林で覆われていて、1720m峰のてっぺんも西側半分はシラビソ樹林だった。これで丸倉山の3つのピークを踏めたので満足だ。

 この先は急斜面を下るので念のために12本爪アイゼンを装着する。今シーズン初めての出番だ。出番があるかは分からないが、急斜面の途中で装着が必要になる場面に出くわすと厄介なので早めの処置だ。

 地形図を見ると明瞭な尾根を下るとそのまま北東尾根を下って最後はツリコシ沢に突っ込むことになるので、微妙に尾根を外して右側を下る必要がある。方位磁石で確認して出発。しかし尾根の右側を少し下ると下れそうにない急斜面が出現。ここは尾根方向の左へ迂回する。その先は急斜面だが下れないほどではなく、コケないように注意しつつも普通に前を向いたまま下ることができた。これも12本爪アイゼンとピッケルがあってこその話である。尾根形状はないので方位磁石で東を確認しつつ、足元に見えている緩斜面地形の尾根っぽい場所を目指して下りてゆく。1箇所だけ急で小さな谷地形はバックで下った。

 下に見えている緩い傾斜地帯では2箇所に盛り上がりが見えるが、地形図を見る限りでは右手のピークが1175m標高点で左手のピークが目的の尾根だろうと左へと進路を振った。

 標高1230mを切ると傾斜が緩んでアイゼンは不要になるが面倒なのでしばしそのまま歩いたが、やはりタダの重りを足に付けたままでは疲れるのでアイゼンを外して歩くことにする。傾斜がそこそこの場合はこの方が靴底を滑らせることができて下りは楽だ。相変わらずブナの樹林帯が続くが目に見えて徐々に積雪が減ってくるのが分かる。周囲を見ると尾根筋より谷筋の方が残雪は多いが、藪屋の本能として尾根を歩きたくなるのはしょうがない。

 標高1050mを切ると雪が途切れて笹を分ける場所も出てくるが雪が完全に消えたわけではなく、場所を選べばまた雪に乗ることができた。笹の濃さも無雪期でも問題ない程度まで低密度化していた。というか濃いであろう区間は残雪に埋もれて確認できなかったが。

 林道が近づくと尾根上は雪が消えて笹の中を歩くが、下に林道が見えた時点で雪が残る左手の谷地形に下って、最後は雪に乗って林道に飛び出した。おそらくDJF氏が林道から取り付いた場所だと思われる。残りは長〜い林道歩きだ。

 往路では気付かなかったが、赤ペイントの距離表示はいろいろな場所に書かれていて、岩だけでなく立ち木の幹もあった。DJF氏の写真と比較すると1年前よりかなり薄くなっているようだった。大所川橋の手すりにも距離がペイントされていて、その数字は4.4kmだった。

 大きな堰堤から先は緩い登り坂に変わり、気温は高いし日差しはあるしで暑かった。これでは雪解けが進むわけだ。もうスパッツの出番すらないのでザックの後に引っ掛けて虫干しし、ズボンの裾をまくって体の放熱効果を高めた。まだ刺す虫はいなかったが、顔の回りにまとわりつくウザい虫は飛び始めていて、そろそろ虫除けスプレーが必要な季節になってきたようだ。

 第二発電所分岐を超えればゴールは近い。2週間前の遠見山、台倉山の時に歩いた奥志賀林道は軟雪で林道歩きに苦労したが、今回はほとんど雪の上を歩かなかったので往復約20kmでも比較的楽だった。

 林道入口に到着。チェーンゲートはオープンのままで、鍵はダイヤル式だった。運がよければ開けられるかも? 出発時に止まっていた松本ナンバーの車はいなくなっていた。今年は黒負山や五輪山、丸倉山を狙う人はいるだろうか?


 まとめ。今年は例年にない早い雪解けで長い林道歩きもほとんど雪を踏まないで歩けてしまったが、肝心の藪はまだ雪に埋もれていて結果的にはちょうどいい時期だったように思えた。このルートの肝は長い林道歩きで、ここをクリアできればその後の行程は短いし、復路で使った急斜面を使わずに往路で使った傾斜が緩い西側を登れば距離は長くなるがリスクは低くできる。丸倉山は単体でも楽しめるが、あれだけ長い林道を歩くなら五輪山と黒負山と抱き合わせで登る方が効率的だろう。その場合は日帰りはかなりの健脚でないと無理っぽいので途中1泊となろう。

 

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